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地方のWeb制作会社がアフィリエイトに取り組んだ4年間の話

      2020/02/18

みなさんは「アフィリエイト」ってご存知ですか?

一般の方にはひょっとしたら馴染みが無いのかもしれませんが、副業に興味があったりWebに関わる仕事をされている方には、かなり認知されている言葉なんじゃないかと思います。

ただ「とにかく怪しいビジネスだ」と思っている人もめちゃくちゃ多いですよね。そこは面倒なお話になるので、あえてここで否定したりはしません。一部エグいことをしているところも当然ありますから。それについてはまたどこかで書こうかと思います。

さて僕の会社では、2015年からアフィリエイトでの収益を目的としたメディア運営を行っています。

最初は苦労したものの、徐々に売上が伸びていき、2018年にピークを迎えて今年9月のGoogleコアアップデートでほぼ「終了」するというサイクルを経験しました。

「終了」とはいうものの、それでもピーク時の1/4くらいは売上がありますので、厳密には終了していません。

2020/1/14のコアアップデートでアクセス復活。もう、よくわかんないですね笑

ただ事業としての注力度で見ると、現在は社内リソースをほぼ割いていないということで、一旦「終了」という言葉を使いました。

僕の会社は、地方で受託制作を主業とする零細企業です。労働集約産業である制作事業だけでは収益が安定しないのは明白です。

ここから記す一連の記事では、そんな会社の代表が、アフィリエイト事業に取り組んだ目的や収益、事業を通じて得たものや失ったもの、さらには今後の展望なんかを書いていきます。もしあなたがいま同じような境遇(地方・受託制作)にあるのなら、何かしら参考にしてもらえるんじゃないでしょうか。

ちょっとした暇つぶしに、是非お付き合いください。

アフィリエイトに会社の事業として取り組んだきっかけと目的

さてまずは、僕の会社がアフィリエイト事業に取り組んだきっかけや目的について。

当社は2014年の5月に設立したのですが、「世界にインパクトを与える!」とか「すげーサービスで世界を変える!」など、そういったことは1mmも思っていなくて、要するに積極的独立ではありませんでした。

超消極的に、前職の社長とどうしても反りが合わなくなったから、というのが最大の理由。

このままここにいてもいい仕事はできないし、当然収入も増えないだろうなと思っていたところに、社長の関係悪化で「もうお前やめていいよ」と言われて、「あ、じゃあ」となったのが最大のきっかけです。

独立・会社設立に至る経緯は今回の記事の本筋ではないのでまたの機会に譲りますが、とにかくやりたいことがあっての独立ではなかったので、とりあえず「できることで食べていく」という状態でした。

幸い会社は設立当初から順調にお仕事を得られていたので、食べるのに困るような状況にはなりませんでした(そのあたりは最後の方で軽く触れます)が、何せ「作って納める」仕事ですから、「単価 × 客数 × 頻度」の勝負。

当時はまだまだ立ち上げたばかりで単価設定も強気に出られず(今も別に強気ではありませんが)、単価より客数と頻度を重視せざるを得ませんでした。

となると、できるだけたくさん仕事をして納めることでしか売上を増やすことができません。事実 1期目・2期目はほとんど休んでないし、毎日14時間くらいは働いてたと思います。

独立2ヶ月目には「あ、これこのままやってたら死ぬわー」って思ったのを今でも覚えていますが、あとから考えたらそんなすごく当たり前のことにその時点で気づいたんですよね。アホかと笑。独立前に気づけよ。

僕は労働集約産業である「受託制作」の規模を大きくすることには、割と当初から否定的で、仕事がどれだけ増えても基本的に外部パートナーさんとやってきました。でもその間ずっと「なんとかしなきゃ、何か見つけなきゃ」と考え続けていたんです。

そしてしばらくして僕の人生に、アフィリエイトビジネスとの接点が出てきます。

アフィリエイトとの出会い

何も変化のきっかけを見つけられないまま会社設立から一期目を終えて、あれは二期目の2015年に行われた、あるWeb制作系コミュニティのイベントでした。

ある有名Webディレクターの方のセッションに参加していたところ、「以前はアフィリエイトとかやってて…」みたいなお話を耳にしたのです。

実はサラリーマン時代、なんとか収入を増やしたくて知人に相談したときに「アフィリエイトがいいんじゃない?」という話は聞いてたんですよね。その時は聞き流しちゃってたんですけど、多分インプットはされていた。

そこで点と点が結びつき、そこからはカラーバス効果でアフィリエイト関連の単語がどんどん目に入ってくるようになっていきます。

そうこうしているうちに、今もお付き合いのあるお客さんのお仕事で、ある方と出会います。

この方、名前は伏せますが、現在では投資家兼マーケター兼有名アフィリエイターとして活躍されていて、当時から大きな結果を出していました。

その方に「最近アフィリエイトが気になってて…」とポロッとお伝えしたのをきっかけに色々教えていただきまして、本格的にアフィリエイトに取り組むことになったのでした。

受託制作ビジネスは好きなんだけど、それだけじゃ消耗する。

むしろ受託ビジネスでいい仕事をするためにも、安定した収益を生み出す何かをつくるしかない。

それに、SEOの知見も他人の知識のインストールだけじゃなくて実践で得たいし、セールスライティングを使ってCVにもっと向き合いたい。

もちろんビジネスの価値を高めて、単価を上げる(=場合によっては依頼をお断りする)ことによって、数をこなすんじゃなくて、もっとじっくりとクライアントワークに向き合うことができる。

そうしたら、ウチに依頼してくださるお客さんにも、もっともっといろんな面で還元できるんじゃないかと思ったんですよね。サイト運営面のこととか含め。

それらを含めて色々考えると、アフィリエイトが一番いいんじゃないかと。というか、Webに携わる人間として、最低限の結果を出すことができないのはマズイんじゃないかと思ったわけです。会社員の副業で数百万とかザラにいましたからね。。。

とにかくコンテンツSEOを使ったアフィリエイトは、SEOの知識や経験はもちろん必要ですし、SERPS経由での流入をできるだけ増やし、その流入からのCVRをどれだけ高められるかを競うゲームです。

こういったことは受託ビジネスをしているだけではなかなか触れる機会のないことですし、結果的には得たものが非常に多く、失ったものは比較的少なかった。ここだけ見れば、事業としてはそこそこ成功したと言えるでしょう。

次に、僕の会社がアフィリエイトだけで得た分の総収入と、すべての事業を通じた期毎の売上推移を書きます。

アフィリエイトだけで得た総収入

2015年から現在(2019年12月)までのアフィリエイトだけの総収入を改めて計算してみました。

その額は、80,335,289円。

税込と税抜混ざってる気もしますので、だいたいです。だいたい。

しかし改めて見ると、なかなか大きい金額ですよね。

ただしここからスタッフの人件費がどーんと抜かれます。そしてアフィリエイトには原価がかからないので、税金もどどーんと持っていかれます。

なので、正直あんまり残ってないです。

すべての事業の売上推移

全事業を通じた売上の推移はこちらです。売上であり、利益ではありません。

1期目 1,900万ほど
2期目 3,500万ほど
3期目 3,700万ほど
4期目 4,500万ほど
5期目 7,700万ほど

こちらは大きな外注費のかかる受託事業が含まれています。これを見ても、やはりアフィリエイトが会社を潤してくれたのは間違いのない事実です。

ただ、会社経営しているひとが見ればわかると思うんですけど、売上はほんとに大したことないです。

僕の役員報酬を含めた損益で見ると、1期目はちょい赤字、2期目はトントン、3期目はちょい黒、4期目からは割と黒、って感じですね。

今期はまだ半分程度しか数字が出ていないので、割愛します。ただし、9月のGoogleアップデートによって凹んでますので、5期目の数字には遠く及ばないでしょう・・・涙

既に予定納税済ませてきたけど。

次に、せっかくなので受託を中心とするアフィリエイト以外の事業と、2019年にGoogleコアアップデートで縮小したアフィリエイト事業について掘り下げていこうと思います。

アフィリエイト事業の現在

コンテンツSEOで行うアフィリエイトは、とにかくGoogleの動向次第で業績が乱高下します。

ちなみに普通のWeb制作会社がメディア運営をせず受託事業をやってるだけだと、ここの動向に全然ついていけないと思うんですよね。なので、制作会社がちょっと抜きん出ようと思ったときに、SEO(いまならSNSなども含めるかな)での集客を軸としたメディア運営はかなり役立つでしょう。

さて、皆さんはGoogleの「コア(アルゴリズム)アップデート」という言葉をご存知でしょうか。このブログを読む人なら聞いたことくらいはあると思います。

これはGoogleが検索結果を表示するアルゴリズムに、特別大きな変更が加えられるときにそう呼ばれるもので、事前に告知される場合もあれば、知らぬ間に実行されててあとから知らされる場合もあります。

2019年は、僕が把握している限りだと3月、6月、9月、そして今年の1月、という感じですね。

実は9月以降は横目で見てる程度なのでそれほどしっかり把握していませんが、細かい変動は日々あります。しかし2019年の3月、6月、9月、そして今年の1月の順位変動についてはGoogleも言及しています。ちなみにGoogleは、これまでも多くのアップデートを重ねてきています。

このコアアップデートについては、僕はSEOの専門家でもないし、この記事で詳しく語るのも本筋からずれると思いますので割愛しますが、とにかくコンテンツSEOによる検索流入をアクセスのベースに置いているアフィリエイトメディアにとっては、もっとも影響を受ける要素のひとつと言っていいと思います。

当社のアフィリエイトメディアはこれまで多くのアップデートを無風で、もしくは追い風にして切り抜けてきました。しかし9月のアップデートで影響を受け、アクセス数は以前の1/2〜1/3程度、収益は1/3〜1/4に落ち込みました。

こちらは当社が運営するアフィリエイトメディアの中の一つの、GA(PV)推移です。月間です。

画像1

最盛期で30万PVほどあったのですが、いまでは8万くらい。売上は意外とPVと比例しませんが、さすがに9月のアップデートが数字に影響する10月以降は売上も落ちました。

現在は25万PV程度まで回復しました。

会社としては3月のアプデで「あ、ついに本格的な終わりの始まりだなー」と思って、受託事業へのコミットを再び強めつつ、非アフィリエイトメディア構築に注力してきたのですが、やはりというか、大方の予想通り9月のアプデで刺されたというかたちです。

コンテンツSEOによる集客は、おそらく僕が始める2015年より少し前が一番ぬるくて、徐々に厳しくなっていった感はありますね。

ただ、僕の知人にはまだまだアフィリエイト事業が絶好調な人もいますし、大御所の方にはもっと早い段階で見切りをつけて避難された方もいますので、これは一概には言えないということを付記しておきます。

売上については、3月以降のものをグラフで掲載します。

3月からの売上推移

3月に数字がいいのは要因がはっきりしているのですが、季節要因を考えるとそれ以降も本来伸びるはずの数字が伸び悩み、9月24日のアップデートで収縮して、10月、11月と低空飛行が続いている状況です。

12月の売上は幾分持ち直していることが判明していますが、これは季節要因であり、SEO的なプラス要因があったわけではありません。

昨今のSEOの難しさを考えると、これをもう一度上位表示させるのはかなり無謀な話であり、静かに役割を終えていく方向かな、というところです。

僕が観測している限りの、ざっくりしたSEOの大きな潮流は以下だと考えています。

  1. 自演リンクでガンガン上がる時代
  2. コンテンツSEO全盛時代
  3. 権威性重視時代

この最後の「権威性って何やねん」なんですけど、所謂「E-A-T」って言われるもので、僕の中では関連のある良質なリンクと、SNSやインターネット上でのサイテーションの組み合わせかなと考えていますが、いかがでしょうか。

これが結局公式に有利に働いているのかな、と感じています。CMとか交通広告とかあるんで。頑張って「(Googleが評価する)いい記事」を書いたら上位表示されるとか、もうそういった次元じゃないよねと。

もちろん、おそらく一部では中古ドメインを使った施策もガンガン効いている場面もあるでしょうし、一概には言えません。でも、僕が観測している範囲内ではそんな感じになってるなーと思います。

受託事業の状況

続いて受託事業についてお話していきます。

当社の受託制作やそれに付随する諸々は、

  • 企業サイトやLP、バナー等(Web系)
  • 紙媒体の販促系ツール(多岐に渡ります)
  • 交通広告などその他のもの

といったところでしょうか。

実はWebより紙系のほうが、業務量に対する売上という意味では優秀です。なぜなら当社のスタイルの場合、企業サイトなどを作る場合は「量産」の概念がありません。完全に労働集約で、僕かスタッフか、もしくはパートナーさんが手を動かすからです。

一方紙系ツールは、入稿までは労働集約と言えますが、印刷等その後の工程は収穫逓増と言えます。要するに印刷や配布に関しては、取引金額が増えても労働時間は増えない、ということですね。

このことからも、会社の利益を考えると意外と馬鹿にできないのが紙系ツールなんですよね。絶対に紙のツールじゃないとダメな場面も多々あるし、両方できるのは割と強みだと思っています。

ただ、誤字脱字などがあった場合は、多くの場合全額負担で刷り直しになりますし納期の問題も出てきますので、免責どう頑張るかってのはかなり重要だと考えています。

アフィリエイト事業以外の売上はだいたい年間3,000〜4,000万円の間で、粗利率は近年上げるようにがんばっていますが、おそらく40〜50%程度でしょう。ちなみに一期目は粗利率35%程度でした。全然お金残らなかったなあ。

弊社で粗利が出ている事業や品目を順に並べると、

  1. アフィリエイト事業(利益率ほぼ100%)
  2. 紙系ツール制作事業
  3. Web系制作事業
  4. 運用サポート系事業
  5. 非アフィリエイトのメディア事業

といったところです。

紙系ツールは何だかんだと長くお付き合いしている企業さんから定期的に頂いているものがほとんどですし、Web系制作に付随して、みたいなことも多いですね。

Web系制作事業は、売上で見れば新規の企業サイト制作が多くなっていて、代理店だったりクライアントからのご紹介だったりで頂いている状態です。

運用サポート系事業は、企業サイトのような大きな制作費は発生しないものの、毎月のサイト更新、SNSやGMBのケア、それらに付随する制作系業務といったところで、毎月何らかの売上が発生する類のものです。LPのABテストのための作業とかも含まれますね。

最後の非アフィリエイトのメディア事業は、今がんばって仕込んでいるサイトです。今の所構築費と人件費で軽く100万円以上の赤字ですが、だいたい2年〜3年後に形になるように頑張っていくつもりです。

まあアフィリエイトメディアも最初の1年は収益ゼロ、人件費垂れ流して200万赤字からスタートして頑張りましたらかね。慣れてると言えば慣れてるかな。。。汗

とはいえ飲食店始めることを考えれば、安いものです。と自分に言い聞かせます笑

メディア運営で得たものと失ったもの

次に、当社(≒僕個人)がアフィリエイトメディア運営で得たものと失ったものについて書いていきます。

Webメディア、特にアフィリエイト収益を主体としたそれを運営するのは、企業によるオウンドメディア運営とは目的が大きく異なります。

地方で受託制作を主業にしている制作会社がオウンドメディアに取り組むのは、成果が出ているかどうかは置いておいて、たまに目にしますよね。

しかしアフィリエイトについては言及されることは非常に少ないと感じていました。

それは「アフィリエイト」というビジネスの仕組みやイメージの影響もあると考えていますが、それにしてももう少し情報が出てきてもいいんじゃないかと。

ということでこの記事では、アフィリエイトビジネスについてあまり知らない方に向けて、まずはその大まかな仕組みを。その後、真剣に事業として取り組んだ結果どんなものを得てどんなものを失ったのかを、できるだけ包み隠さず書いていきたいと思います。

アフィリエイトビジネスとは

記事の最初にも書きましたが、「アフィリエイト」という言葉にはちょっと胡散臭さみたいなものを感じている人が多いように思います。特にクリエイティブ系のお仕事をしている人たちは特に、少し下に見ているというか、そんな空気感を感じます。「俺たちはそんな商売やらねーよ」的な。

「まあ、良い印象ではないですよねー」

っていうのは、アフィリエイトに携わっている人なら全員感じるところではないでしょうか。企業がそれに取り組んでいることを公言することも少なく、東証一部上場の超有名企業の資本がガッツリ入った会社が、いろいろ紐解いてみると「実はやってます」というケースも少なからず存在します。

確かにアフィリエイトビジネスは、事業としての社会的貢献とは少し遠いところにあるのは事実だと思います。あと、事実として「儲かるならある程度グレーなこともやる」という方々がいるのも否定はしません。

例えば、中古ドメインを利用した被リンク施策を用いて、意図的に検索結果画面(SERPS)を操作することは頻繁に見られます(僕はこれをモラルだけで否定するのはちょっとどうかと考えていますが)

さてそもそも、アフィリエイトの仕組みについて正しく理解できていない方もいるかも知れませんので、主なケースを図解します。

まずビジネス(要望)の流れを見ていきましょう。

アフィリエイトのビジネスの流れ

このような形で、商品を売りたい広告主企業からメディアまで要望が落ちてきて、購買意欲を高めた状態で広告主のLPへアクセスを送る、と取り決めます。

次にアクセスの流れです。

アフィリエイトのアクセスの流れ

検索の上位表示や広告経由でアクセス集めて、流入したメディア内のセールスライティングで購買意欲を高めた状態で広告主のLPに送ります。広告主のサイトで購入するかどうかは、アクセスした購買者によります。

最後にお金の流れです。

アフィリエイトのお金の流れ

購買者の購入によって発生した代金は、当然のことながら購買者から広告主に直接支払われます。その後広告主から代理店へ、代理店からASPへ、ASPからメディア運営者に報酬が支払われます。

ケースによっては代理店が存在しないことや、広告主とメディアの直接取引もあり得ますが、主なケースとしてはこのようなかたちです。

さて、ここで質問です。

このビジネスモデル、どこかに怪しい要素がありますか?

広告主には名だたるナショナルクライアントも数多くいますし、ASPは上場してる企業も多くて、僕は普通に営業代行と変わらんやろと思っています。

ここを理解せずに「稼げる!と喧伝される怪しい副業」みたいな目で見ている人は割と多い印象です。

確かに「アフィリエイトで稼げる」的な高額情報商材もあります。また、実際にサラリーマンの副業で、僕が知っている限りでも1ヶ月に1,800万円の利益を上げた人もいます。さらに一部の商材は明らかに優良誤認に近い状態で販売されているのも事実です。

そういう話が悪い方に膨らんでいって、結果的にビジネス全体が悪い印象になってしまったのは理解できるところ。

でも僕はこのビジネスに、真剣に4年間取り組んできたことによって、非常に多くのものを得られたと考えています。

アフィリエイトメディア運営で得られたもの

僕がアフィリエイトビジネスで得たものは大きく3つ。

それは、

  • SEOにおけるクエリ感覚と経験
  • マーケットインの感覚と経験
  • ある程度まとまったお金

です。

SEOにおけるクエリ感覚と経験

どれだけSNSマーケティングがもてはやされたとしても、やはり検索経由の流入はまだまだ大きなボリュームを持っています。技術的にも、検索以外の方法で欲しい情報にたどり着くのは難しいことが多いですよね。

SNSで「タグれば」いいじゃん、と思うかもしれませんが、それだって何らかの言葉を使って検索します。

この「検索」という行動による集客を考える上でとても大切なのが、「クエリ感覚」だと考えています。「クエリ感覚」とは、誰かが何らかの情報を探しているときに、どんな言葉で検索するのかを想像する力です。

これがズレていると、ありきたりで激戦なクエリで施策を打って上位表示できなかったり、誰も検索しないようなクエリを自分勝手に考えて上位表示して、PVも少ない・CVしないと悩むことになります。

コンテンツSEOによるアフィリエイトは、「売りたい商品の情報」を「(潜在的・顕在的に)買いたい人」に届けることが生命線のビジネスです。

もちろん、ストレートな商品名で上位表示ができるのであれば、ぶっちゃけめちゃくちゃ売れます。めっちゃ儲かります。でもそんなのは全員が考えることですから、そこからの発想力が重要になってくるでしょう。

また、綺麗事だけじゃないSEOについても知見を深めることができます。被リンクを自演でないかたちでどうやって構築するか。もちろん場合によっては自演リンクだって有効な手段となりえることを理解できているかどうか。

こういったことを実践を通じて、しかも危機感を持って培えたのです。

制作会社は、Webサイトを納めたら「地道に育てましょう」と言わざるを得ないと思いますが、どう育てればよいかを経験則としてわかっていることは、大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。

マーケットインの感覚と経験

僕らって往々にして、自社事業を行うときにプロダクトアウト的な発想になりがちです。「こういうサービスは絶対受けるはずだ!」という思い込みを、様々な方法を駆使して正当化していく。

正当化されちゃってるもんだから、周囲の人もなんとなくその気になって盛り上がっちゃう。

その結果、まったく支持されないサービスやプロダクトをつくって、大赤字まではいかなくとも、微妙な結果となって終了する(これは事実僕が以前に経験してることです笑)。

アフィリエイトに取り組む際に何度か教えていただいたこととして「マーケットを作ろうなんて思ってはダメ」ということです。すでに存在しているマーケットに乗せてもらう感覚でちょうどよい、と。

僕らがSNSなんかで普段見ている東京の起業家の方々は、超優秀で人脈も環境も整ってて、そりゃーキラキラして見えますよね。でもあの方々の足元は死屍累々のはずなんですよ。

だって僕らが普段使ってるようなイケてるサービス、いくつあります?数えるほどですよね。

toCならスマホのホーム画面の一角を占拠しなきゃならないことが多いし、toBにしてもそれぞれの分野で圧倒的結果を残さないとすぐにシェアを奪われてしまうわけで。

そんなことを「自分にだってできる」と思うのは、ちょっとぶっ飛んでないと成り立たないと思うんです。だから彼らはすごいわけで。

凡庸なる僕らとしては、彼ら、もしくは先達が切り開いたマーケットのほんの一部を貸してもらうくらいの感覚でいたほうが、何かと怪我が少なくて済むと思うんですよね。

先程の「クエリ感覚」のところでも触れた、

誰も検索しないようなクエリを自分勝手に考えて上位表示して

といったことは、往々にして起こるんですよね。

ここの感覚も、アフィリエイトを通じて得たものなのです。

ある程度まとまったお金

コンテンツSEOによるアフィリエイトは、効率の良い方法で行えば、非常に大きな利益をもたらしてくれるものでした。

もちろん「儲かる市場(=激戦ジャンル)」に突撃する勇気は必要ですが、そこである程度の立ち位置(この場合は売れるクエリでの検索順位)を持ってしまえば、制作系業務ではとても考えられないような収益を得られます。

当社の内部留保は正直それほど大きくできませんでしたが、それでも次に何かをやる場合にもしっかり投資することは可能となりました。

また、破談となってしまったものの、数千万円というまとまった金額でのサイト買収のお話も進めていました。「事業売却」なんてそうそう経験できるものではないのでなんとか実現したかったのですが、タイミングの問題や、買収金額が高額なことから、双方が慎重になって流れてしまいました。

このように、手元にある程度まとまったお金を得たことについても、4年間真剣に打ち込んできた結果として受け止めています。

ただし正直なところ、この事業に取り組んだことによって失ってしまったものも、わずかながらあると考えています。

アフィリエイトメディア運営で失ったもの

厳密に言うと「失ったもの」というより、「得られなかったもの」と言ったほうが良いのかもしれません。

まず、おそらくクリエイティブ系の人からの信頼は、この事業を通じては得られていないと思います。これは、どうしてもお金にフォーカスしてしまうからだと考えています。普段からお金や売上の話が多くなってしまっていましたし。

とはいえ、そもそも僕は、よい事業を営むためには何よりもお金が必要だと考えていますから、制作会社としてのスタンスがちょっと違うのは事実です。これは仕方ないかなと思いますし、寂しいですが特に問題視はしていません。

もうひとつ、労働観が少しだけ狂いました。

以前はがんばって徹夜も辞さずに成果物を納めて、翌月末にそのぶんだけ入金があって、それに向けて納めた次の日から(もしくは多くの場合並行して)別の仕事に取り組むというスタイルでした。もちろん今だってそれは重要な事業として捉えていますし、絶対にやめない方向で考えています。

ただ一方で、検索結果という厳しい壁を乗り越えれば、ほとんど手を動かさなくても高い利益率の収入が発生する事業をつくってしまったわけです。

会社が潤うことによって良いサイクルになったことも多くありますが、悪い面もあるかなと思います。以前の僕とは絶対に考え方が変わっていますし、実際に離れていった人もいますから、本当に難しいところですね。

事業主として、心を強く持ちたいと思います。

メディア運営に注力したこの4年間の軌跡

最後に、2015年にアフィリエイトに出会い、会社の収益安定と相乗効果を目指して取り組み、2019年にGoogleコアアップデートで刺されるまでの歩みを記します。

これから始めたい、という人も過去の流れを知っておくと参考になる部分があると思いますので、飛ばし読みでもお付き合いくだされば幸いです。

2015年 アフィリエイトに出会い、始める

会社をつくって2期目。それまでWebサイトや紙媒体の受託制作で何とか頑張ってきたけど、40歳を手前にして「このままじゃ死ぬ」と思っていたところへ、アフィリエイトと出会う。

そしてあれは確か8月のある日、今でもお世話になっている師匠とはじめてそれについて話しました。

受託制作事業ではなかなか得づらい、以下の

  • 運営の経験が欲しい
  • SEOを学びたい
  • CVに近いところで仕事がしたい

といった経験を求めてアフィリエイトに参入することを決めます。もちろんできれば収益化もしたかったけど、どちらかと言えば受託事業との相乗効果を狙っていたんですよね。そしてそれについてはかなり期待通りになりました。

12月にはサーバー契約とドメインを取得し、WordPressをインストール。まあこれは職業柄5分で終わります。

そして最初の記事は12月13日に投稿してました。今見返すと拙さはあるものの、そんなに悪くない記事。

こうして最初の一歩を記して、2015年は暮れていきました。

2016年 1年かけてようやくドメインが育つ

ここからしばらくは食べるための受託事業と、将来への種まきであるサイト運営の両立が難しく、相当きつかった時期が続きます。

受託の忙しさを言い訳にして作業が進まず、当然のことながら結果が出ない日々。ま、今思えば、そもそも新規ドメインを使って1ヶ月やそこらでは結果が出るわけがないんだけど。

それでも見返してみれば1月だけで28記事ほど更新していて、まだこの頃は全記事自分で書いていましたね。

そして3月、この運営体制では結果を出すのにどれだけ時間がかかるかわからない、ということで初めてのスタッフを雇用しました。結果的にこれが大正解で、今は退社してしまったこのスタッフが、ウチのメディア事業部を大きくしてくれたのは紛れもない事実です。

彼女には、今でも感謝し続けてます。

それでも実は、最初は受託制作事業のアシスタントとして雇用したんですよね。ただ意外と教育に時間がかかりそうだったことから、方針転換。メディア事業は僕もまだまだ知識も経験もなかったので、これを二人で進めてサイト育成にかかる時間を半分にしようと考えた。試行錯誤の量を2倍にしたわけですね。

そうこうするうちに、いくつかの記事がアクセスを掴みだします。この時期はアフィリエイト的なコンテンツはゼロ。とにかく検索からの流入量を多くしてGoogleからの評価を定着させることしか考えていませんでした。

この頃になるとようやく、

  • Googleの意向に沿っていて
  • オリジナルで
  • 価値のある記事で
  • 競合が少ないクエリを狙えば

そこそこアクセスが見込める状態になってきます。

要するに、ドメインが育ってきた(サイトへのGoogleからの評価が定着してきた)わけですね。

そして8月頃からは収益化を目論んだ記事作成に転換。こちらもすぐには結果が出なかったものの、12月には10万円の売上を記録(※厳密には売上ではないけれど、便宜上そう書きます)。

正直に言うと、12月にある程度の兆しが見えなければ、メディア事業からの撤退も考えていました。

受託事業がすごく忙しかったのもありますが、3月からのスタッフの人件費に、僕の作業時間(=受託の作業時間削減)、さらにコンサルフィーも支払っていて、大きな赤字事業となっていたからです。

それが12月に、たった10万円といえど結果が出たこと、さらにアクセスが伸びてきていたことを受けて鋭意続行することに。

こうして、2016年は希望を持って終えました。

2017年 後半、月の売上が100万円を超える

2017年、ここからアフィリエイトの面白さを享受します。

1月に20万円ほどの売上を記録して以降、一時は月の売上が160万円ほどまで伸びました。

アフィリエイトメディアが急激に売上を伸ばしていくサイクルは以下です。

  1. アクセスが増えてくる
  2. Googleから評価される
  3. 検索上位に表示されやすくなる
  4. 1〜3を繰り返す
  5. ASPから広告掲載の打診が来だす
  6. 上位表示されていれば、報酬の単価交渉が可能になる
  7. 検索上位と報酬単価の上昇によって売上が伸びていく

1〜3までの土台があっての話ですが、SERPSで上位表示されているとやっぱり売れるので、いろんな企業がASPを通じてサイト内で「紹介してほしい」と打診してきます。

ただし、当然ながら「取れるクエリ」という、購買に近いクエリでの上位表示が条件です。

例えば「商品ジャンル名 + おすすめ」というクエリで1位を取っていたら、本当に簡単におすすめした商品がたくさん売れるので、高い報酬を払ってでもその場所を欲しがるわけですね。

トータルすると2017年だけで800万円の収入がありましたが、ほとんど粗利益です。

ここにもこのビジネスのすごさがあると思います。

2018年 月の売上が500万を超える

2018年は大きく躍進。とにかく高単価の商材が売れたので、売上も爆発的に伸び、この年だけで4,000万円ほどの収入がありました。

ただし業績に応じてスタッフの給与を大きく上げたことと、原価がないことから税金もそれなりに大きく、思っているほど会社にお金は残っていません。

また、どこかで冷めていた自分もいて

「これはいつか終わる。こんなのが続くわけがない」

という気持ちもありました。周囲の人にも

「今はいいけど、来年はどうなってるかわかんないんだよね」

って言ってましたが、まさにそのとおりの展開に笑

この頃にはもう自分の手はそれほど動かしておらず、次の動きを考えるべきか、それとももう少し注力すべきかを考えて模索していた時期です。

そしてもちろん、この時点でも受託制作の仕事は継続して続けています。これも結局のところ、アフィリエイトビジネスの儚さを見越した僕の危機管理だったように思います。

2019年 前半から不穏な動き、そして9月に刺される

季節要因での変動はあるものの、売上自体は順調に維持していました。

しかし3月に少し状況が変わってきます。Googleのコアアップデートです。

当社のメディアはここまで、コアアップデートを無風、もしくは追い風にして伸びてきました。

追い風というのは、上位表示されていたサイトがコアアップデートで順位を落とすとSERPSの席が空くので、それまで順位が下だったサイトにチャンスが巡ってくるわけですね。ここに上手くハマっていたように思います。

しかしついに、3月のコアアップデートで若干ではありますが、順位の下落を記録しました。

これを受けて僕は「コンテンツSEOによるアフィリエイトビジネスの終わりの始まり」を感じ、受託ビジネスへの再コミットと、新規ビジネスの模索を本格的に強めることとなりました。

ちなみにサイト買収の話が浮上したのはこの時期で、5,000万円をラインに交渉を進めましたが、結局破談となりました。もし売却できていたら「持ってるな」ってなりますが、若干罪悪感が残るかも。

そして9月24日。

2019年3回目のコアアップデートが発動し、当社のアフィリエイトメディアも大きく影響を受けました。

それまで毎月300万ほど、最高で500万ほどあった売上が、月に100万円ほどまで落ち込みます。

これにより、当社はアフィリエイトビジネスからは撤退することを余儀なくされます。

ただし先程も書きましたが、3月のアップデートの時点ですでに次に向けて動き出していましたし、アクセス減についてはそれが「いつ来るか」の問題だけで、完全に予想の範疇でした。

もちろんメディア自体は、今でも月に100万円近い利益を生み出し続けてくれているわけですから、メンテナンスはしっかりしていきます。そのメンテナンスも月に4時間程度しかかかっていないので、未だに利益の面では優良なビジネスであることに変わりはありません。

こうして、2015年からはじまったアフィリエイトへの取り組みは、一旦の区切りを迎えることとなりました。

まとめ

今回記した記事では、かなり具体的な金額を書きつつ、当社のアフィリエイトビジネスへの取り組みについて振り返ってみました。

会社の経営という意味ではものすごく優良なビジネスであり、言わば「その月暮らし」だった当社の財務状況を大きく改善してくれました。

この利益により、受託ビジネスを抱えすぎることなく取り組めるようになり、案件に対して正当なパワーを注ぐことができるようになりました。

また、次のビジネスに向けての投資を、自己資金で躊躇なくできるようになりました。

さらに税金を多く支払うことによって、ある程度の社会貢献もできたと思います。

当社がアフィリエイトメディアで紹介している案件は、報酬単価だけで決めることはなく、もしそれが最高のものでなくても、良いものかどうかを見極め、メリットだけでなくデメリットもしっかりと書いた上で紹介していました。

最後に、これからアフィリエイトビジネスをはじめようと思っている方に少しだけアドバイスを。

ビジネスとしては全然終わっていないと思いますが、コンテンツSEOで検索流入を元にしたアフィリエイトサイトは、今後非常に難しい状況になっていくと思われます。

何の強みもない個人が記事を頑張って書いても、おそらくそれほど大きな利益は手に入れられなくなるでしょうし、すでにそうなりつつあると思います。

ただし、会社としてある程度の予算を持って広告出稿をベースに展開していく手法など、僕が経験していないやりかたならまだまだ戦えるのかもしれません。

また、知人の有名ブロガーさんも「めっちゃ調子いいです」と言っていたので、僕に力がないだけとも言えます。

それらを踏まえて、副業としてだったり、会社の事業として取り組むかどうか判断してほしいと思います。

僕だってまた流れが変われば、いままでの経験や資産を活かして再度注力するかもしれませんし。

おまけ:4年間の売上推移

最後に、4年間のアフィリエイトビジネス全体の売上の推移を掲載します。

金額はほとんどが税抜ですが、一部集計時に税込金額が入ってしまった可能性があるので、参考程度までに。

2015年

12月 0円

2016年

1月 0円
2月 0円
3月 0円
4月 0円
5月 0円
6月 0円
7月 0円
8月 0円
9月 0円
10月 3,721円
11月 4,834円
12月 3,493円

2017年

1月 197,802円
2月 300,000円
3月 393,321円
4月 453,103円
5月 464,413円
6月 476,504円
7月 599,462円
8月 593,472円
9月 719,496円
10月 1,591,328円
11月 1,064,607円
12月 1,214,872円

2018年

1月 1,525,589円
2月 1,456,611円
3月 2,204,453円
4月 3,584,030円
5月 3,754,741円
6月 4,901,306円
7月 5,182,077円
8月 4,504,761円
9月 3,547,573円
10月 3,813,421円
11月 3,544,399円
12月 2,249,570円

2019年

1月 4,434,618円
2月 2,656,701円
3月 3,616,126円
4月 3,068,581円
5月 3,144,494円
6月 3,287,927円
7月 3,095,940円
8月 2,847,197円
9月 2,889,184円
10月 988,835円
11月 723,420円
12月 919,053円


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