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これだけはやっとくこと!普通の会社員デザイナーの独立準備

      2016/10/08

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いまの僕は会社員デザイナーを辞めて即法人化して2期目の一人会社の経営者。会社員時代は賞を取ったりとは無縁。普通のブラック企業に勤めるしがないデザイナーだったわけですが、そんな僕でもなんとか会社を維持しつつそこそこ自由に、そしてとても楽しく生きています。

そんな僕から、いままさに「もうこんな会社やめてやる!」と思っているデザイナーの人たちに向けてエール代わりに経験に基づくアドバイスをしたいと思います。

この記事を読んだ人の独立がすこしでも幸せなものになるように願って。

まずは会社を辞める時期を決めよう

会社を辞めたいと思った時、あなたは辛くてしかたがないかもしれない。もう明日から朝の出社がとても憂鬱かもしれない。

人間一度嫌になってしまったら、それを自分の意志で覆すのはとても難しいです。

でも、ちょっとまってください。焦って会社から飛び出すのは得策ではありません。

まずはちょっと深呼吸をして、今後どのような行動を取るのがベストかを考えましょう。

ここで「落ち着いて会社に残れ」とは一切思いません。独立を進めるのは無責任かもしれませんが、独立して得られる経験は中小企業の会社員のそれとは比較になりません。

特にデザイナーのような職業だと会社の外に出ることも少なくなりがち。僕がいた会社がそうだったのですが、デザイナーが接するのはほとんどが同じ会社の営業やディレクター。デザイナーとして外に出ていけるのはそこそこ経験を積んだ上司だけだったりします。これでは同世代が得られる経験と比較して、いろいろと不足してしまうこともあると思います。

さて会社を辞めて独立することを前提に話を進めていきます。

「もう辞める」と決めれば、不思議といままで怒りに燃えていたり、憂鬱になっていたことから、いくらか、時には完全に開放されます。僕は会社をやめる最後の一週間なんて「もうこの会社での将来悩まなくてもいいのか」と、とても晴れ晴れした気持ちでいました。

まずは落ち着いたところで、自分の今後を想像しましょう。

独立するにあたって、いまの自分に足りないものは何か。

デザインのスキル

デザインのスキルは最低限必要。デザイナーですから。ただ、僕のように「デザインでは食べない」と決めるのもあり。デザイン経験豊富なディレクター・営業という立ち位置には価値が生まれる。

営業力

営業力は必要。ただしそれに変わる手段もある。僕も営業はできない&しないです。それは確実な仕事と迅速な対応。

社交性

社交性は必要です。ただし圧倒的デザイン力があればいらない。

でもそういう人はこの記事を読まないと思うので、社交性必要と言っておきます。

といっても媚びへつらうようなのは不要です。普通に友達と仲良く過ごせる程度のコミュ力があればいいです。

備品

Macやソフト、フォントなどの備品必要。必須ですね。ここをケチるとろくな事にならないです。お金を稼いでくれる道具。ミュージシャンにとっての楽器であり、料理人にとっての包丁。

そして違法コピーはやめましょう。シェアウェアはタダで使わずお金を払いましょう。人にやられて嫌なことは自分もしない方がいいです。

独立準備が整うまでの時間を考える

これらを整理して、ある程度の準備ができるまでにどのくらいの時間が必要か考えましょう。

有給もしっかり消化しましょう。当然の権利です。そこも含めて後何ヶ月給料をもらうか考えて、退社する時期を決めましょう。

僕の場合は、社長から「もうやめていいぞ」と言われて1週間で退社しました。「落ち着いて考えろって言ったじゃないか」と思われるかもしれませんが、それまでに2-3年かけて準備をしていました。

ですから、不慮の事態にも焦ることなく退社ができたわけです。

「会社の辞め方」の方針を決めよう

さて会社を辞める時期を決めたらそこに向かって逆算で行動していくわけですが、その前に大まかでいいので会社の辞め方を決めましょう。

というのも、会社の辞め方次第で、独立後の苦しい時期の戦術が変わってくるからですね。

僕は円満退社ができなかったのですが、やはり円満退社が一番望ましいです。

円満退社した場合、会社にかける迷惑がかなり少なくなります。こうなると、例えばその会社から仕事を貰えることが少なく無いです。

会社からすれば勝手知ったる元社員が外注になってくれることは結構メリットのはず。外注は固定費かかりませんからね。

ただし、どうしても強く引き止められるという局面も出てくると思います。その場合、強引に辞めるのか、関係性を重視して時間がかかっても納得してもらえる状況を作るのか、検討しなくてはいけません。

僕は円満退社できなかったのですが、上司は状況を理解してくれていました。社長との関係性が崩れただけだったからです。現在は仕事をもらってはいませんが、逆にこちらの仕事を依頼することはあります。

といっても、社長とは退社依頼一度も顔を合わせていませんが。まあ退社翌日にFacebookのともだちから消えていましたからねえ。。。

ま、そこはそういうこともあるってっことで。

会社に依存しない状況を作っておこう

さて会社を辞めることを決め、時期も決め、関係性をどうするかを決めたら、今度は自分の準備です。

まず、明日会社が爆発しても絶対に困らない環境を作っておくことが重要です。

金銭面の依存

金銭面はある程度依存せざるを得ないですね。そりゃそうです。フルタイムで働いているわけですから。

もし副業で会社からもらう給料より多く稼げているのだったら多分この記事は読んでないと思いますが、そういう方は何も気にせずさっさと独立しましょうw

で、金銭面の依存はどう処理するのか。これは副業しか無いと思います。もちろん独立を前提にするのですから、コンビニでバイトとかしても意味無いです。

もちろんダブルワークとなるわけですから、相応にしんどいです。僕も一番やってた時期は一日4~5h睡眠で食事や入浴以外ははずっと仕事していた時期がありますね。

ただ、この状態がそんなに長く続くわけではありませんし、副業にしているの間は仕事の量にも波があります。そもそもある程度の仕事量に耐えられる底力みたいなものが無いと、独立した後に来る仕事の波を乗り越えられない可能性があります。

この副業で毎月じゃなくても、月に20~30万程度稼げるようになってくると、かなり前途は明るいように思います。

副業のひとに仕事出すって結構めんどくさいんですよ。すぐに対応してくれないのが基本ですし。なので、その悪条件を理解してもらってでも仕事を出してもらえるという状況が大切です。

このときにお仕事を下さったお客様は、多少条件が悪くても恩を返す意味でお仕事を請けましょう。きっとそれも結局は自分に帰ってきます。

心理的依存

会社員というのは楽です。しんどいんですけど、やっぱり独立してから思えば楽です。面倒事は会社がやってくれます。例えば給料も黙っていても振り込まれます。

これが独立してからは自分で請求しないとお金を貰えません。さらに請求しても払わない人がいたりします。

その他にも経費の計算とかもありますし、作業があってもお客さんと飲みに行かないといけないこともあります。どちらも今までだったら事務員さんや営業さんがやっていたことですよね。

会社というのは分業して専業化して効率を上げるということに他なりません。

しかし独立してからは、これらを全部自分でやることになります。

ですので、様々なメイン業務以外の仕事を積極的に知るようにしてください。実際にはやらなくてもいいのですが、独立してから「え!これも自分でやるの?」となっては遅いです。

そう、最初は全部自分でやるのです。もしくはアウトソーシングでお金をつかうか。

設備・環境依存

あなたが仕事中に座っている椅子、普通のオフィスチェアですか?それともちょっといいワークチェアですか?

Macはもちろんディスプレイやキーボード、マウス、普段使っている付箋やメモ用紙、ボールペン。

これらは、おそらく会社のお金で買われたものですよね。

難しいかもしれませんが、できれば早いうちに自分のものを持ち込むといいです。

僕は腰を傷めたこともあって、かなり早い時期に15万円ほどの椅子を無理して買って、会社に持ち込みました。この椅子は独立してからも愛用していて、新しいオフィスにそのまま持ち込みました。

また、実はデスクもMacもマウスもキーボードも、仕事で使うほとんど全部のものに私物を使っていました。

これはなぜかというと、そもそも独立を意識していたことも確かですが、会社支給のPCや椅子は、その時点でベストの性能のものでは無いからです。

僕は最新のMBPと外部モニタを購入し、AdobeのCreative Cloudも契約した上にモリサワフォントの1パスポートも購入しました。キーボードやマウスももちろんです。これらでしめて50-60万円くらいでしたが、得られたメリットは大きかったです。

会社から精神的に大いに開放されました。MBPであればどこへ行っても仕事ができますしね。

できるだけお金を貯めよう

これはまあ当たり前ですかね。でも大切なことなので書いておきます。

独立した後すぐにお金は入ってこないです。お分かりかもしれませんが、企業というのは売掛・買掛で動いています。

今月の売上を月末でまとめて請求して、翌月末に入金される。これが一般的です。

請求についても月末で請求されたものを翌月末に入金です。

ここで注意しなければならないのが、その月に作業をしたからといってその月の売上にならない場合が多いということです。

当然デザインは仕事のフローの中でおそらく真ん中あたりにあると思います。

  1. 企画が立ちあがる
  2. 仕様が決まる
  3. 設計される
  4. デザイン
  5. 実装(印刷)
  6. 納品

印刷であれば、その後は比較的早く進みますが、Webサイトやシステムの構築だった場合、そこからがかなり長いです。

デザインが終わっても納品が行わなければ入金してくれない企業も多くあると思うので、下手をしたら入金が作業月の3〜4ヶ月後、支払い条件や案件の進捗によっては半年後ということもありえると思います。

作業が終わってから入金までのこの期間、もちろん他の仕事をしているわけですが、とにかく独立して最初の2ヶ月間は収入がないと思ったほうがいいです。

ですので、有給消化時にどれだけ自分の仕事をやれるかはかなり大きな要素となりますし、仕事の量には波があることを見越して、現金をなるべくたくさん持っておく必要が有ります。

具体的には半年無休でも生活レベルと落とさなくて済む程度には現金が必要かなと思います。

ケガや病気でも無い限り、いきなり収入が0になることは普通有り得ません。ちょっと足りないな、とかはありますが。その場合は頑張って仕事を得るしか無いのですが、手元に現金があれば、目先のお金に惑わされて条件の悪い仕事に飛びつかなくても済みます。

現金大事です。

「仕事をくれる」という人を当てにするのはやめよう

会社辞めて独立するんです、というと「お、そうなんだ仕事出すよ」と言ってくださる方がいます。

とてもありがたいお話です。しかしこの言葉を当てにするのは危険です。

目の前にいる人が喜びそうなことを言いたがりますからね、人は。

こう言ってくださった人の中で実際に仕事をくださるのは1/3くらいですかね。実感としては。

お仕事をくださらない彼らとしても、悪意があるわけじゃないんです。前職との付き合いもありますし、それは仕方の無いことだと割りきりましょう。

とにかく人を当てにしない。自分の力で仕事を得ることが大切です。

積極的に社外に出て、横のつながりを作っておこう

在職中から意識的に外に出ましょう。

いろんな勉強会でもいいです。勉強会に行ったらせっかくなので懇親会にも出ましょう。これは投資だと思ってください。

そういう僕も、「この会社にいてはダメだ」と思ってからはとにかく外に出ていろんな人と知り合いになりました。

もちろんその中には現在仕事の付き合いをしている人もたくさんいますが、それを期待するのではなく、自分の見識を広げるためだと思いましょう。

ここで注意して欲しいのは「異業種交流会」の類にはあまり得られるものが無いということです。ああいうのに来ている人は往々にして「クレクレ君」であり、自分が提供できる何かが少ない場合が多いように思います。

とは言え、これもひとつの経験。ここで読んだだけではわからないことがたくさんあるので、そういう異業種交流会にも数回なら参加してもいいと思います。

僕は参加してよかったと思ったことは一度も無いですけどw

なのでおそらく余程の理由が無いと二度と参加しないと思います。どうしても断れないとか。そういう理由ですね。

事業主仲間を作っておこう

できれば同業の事業主仲間を作っておきましょう。

事業主は事業主を歓迎します。だいたい。「今度独立するんです」といえば、いろいろ教えてくれます。

会社員には教えてもしかたがないけど、事業主なら知っておいて損はないことが世の中にはたくさんあります。僕もたくさん教えてもらいました。

最初は教えたがりな感じがちょっとうっとうしいかもしれませんが、実体験を伴ったその話は役に立つことも多いですし、人間性が合わないと思えば、距離を置けばよいのです。

そう、距離を置いてもいいんですよ!だって会社の中の関係じゃないのですから。

そうやって気の合う同業仲間を見つけて、仲良くしておけば独立当初はご祝儀的に仕事をくれるかもしれませんし(だいたいくれますw)、こちらが仕事で困ったときにも相談できるんですよね。

僕はこの仲間の存在が今でもとても大きいと思っています。

がんばって仲間を見つけましょう。

できればいまのお客さんとも仲良くしておこう

いまあなたが担当しているお客さんは、あなたの仕事ぶりを知っています。

これは営業のいらない最高の状態です。不満を持たれていたらしんどいですがw

なので、独立を思い立ったらなるべく仲良くするように心がけてください。

もちろん在籍している会社との関係性もあって、すぐに仕事をくれるとは限りませんが、例えばいまの会社に「◯◯さんにウチの仕事出してあげてよ」といったことを言ってくれるかもしれません。

そして困ったときにはきっと助けてくれるでしょう。

結局仕事というのは人との関係性の上に成り立っているのです。

そういう意味でも、自分の仕事を知っていてくれて、さらに仲良くしてくれる人というのは大切にしなければいけません。

クレジットカードを作っておこう

会社員のうちにクレジットカードをたくさん作っておきましょう。

個人のクレジットカードでも事業用に分けて使えばとても便利に使えます。

独立するとちょっと審査が厳しくなるかもしれませんので、年会費の安いものをいくつか持っておくようにしましょう。

クレジットカードの素晴らしいところは、ネット決済に使えることや現金がなくても仕入れができることもありますが、支払いサイトが有利なんです。

12日などで締めて月末支払い等が一般的ですよね。
これは個人でも買掛での取引ができるのと同じことなんです。

これが何を意味するのかというと、キャッシュフローの面でとても有利なことなんです。

紙のデザイナーの場合印刷も手配することがあるかもしれません。

印刷というのは意外と金額が大きくなるものです。これをすべて現金で手配していると、ちょっと入金が遅れただけで手元に現金が無くなってしまうという事態に陥るかもしれません。

これをクレジットカードで支払っていれば、請求は場合によっては1ヶ月半後にできます。

この恩恵はいざというときに味わうことができるでしょう。味わいたくないですけどね。

僕は事業資金を500万で始めたのですが、一時的に100万円ちかくまで減ったことがあります。もちろん売上の見込みはあったので、純粋にキャッシュフローの問題でした。こういう時にカード払いは役に立ちます。手元の現金が減るのを先延ばしにできるのです。

もう一度言います。

現金大事です。

売上の目標を決めておこう

自分がどの程度の売上を上げることができるのか、自分なりにシミュレーションしてみましょう。

それが例えば40万円だとしたら、売上目標はその倍の80万に設定しましょう。80万だったら160万円。

自分で事業をしていると会社員時代には使わないお金がどんどん出ていきます。例えば交通費。例えばオフィスの家賃や光熱費。例えば大切な事業主仲間との飲み会やお客様との飲み会。セミナーへの参加費。ソフトウェア代。

さまざまなお金がかかってきます。

自分がこのくらいあればある程度余裕を持って生活できる、という金額の倍に設定しましょう。

そしてこの金額によって、法人化するかどうかを決めましょう。

多分、目標の金額以上にはなかなか売上を作りづらいです。そのような売上を得るだけの行動になってしまうからです。

やはり意識の力は大きいです。

目標金額は事業主仲間に言いましょう。

僕は「これくらいは稼ぐつもりです。」と言ったら「そんなに?甘くないよ?」と言われたことがありました。

今思えばその金額は軽く超えてしまっているわけですが、彼はその程度しか稼げていなかったんだろうなあと思うとちょっと寂しいですね。

決意を持とう

事業主になるということは、ほんとうの意味で自分という人間の経営権を握るということです。

何にお金をつかって何を得るのかを決める。それが目先の楽しさでもいいのです。すべて自分に跳ね返ってくるのです。

先日読んだ記事にこう書いてありました。

「起業というものは、自分の行動以外をあてにしない、ということだ」

まさしくこれです。全ては自分の行動の結果が跳ね返ってくる。

でも裏を返せば、自分自身「ちゃんとやっている」と思えるほど向き合っていければ、必ず売上は上がると思います。

僕の周囲の友人は仕事が大好きで努力を努力だと思っていないのですが、そういう気持ちや決意で臨めば、仕事の質も上がるので良い評判が立ち、仕事が舞い込んでくるでしょう。

事実彼らは本当に忙しそうにしていますが、同時に楽しそうにしています。

まとめ

いかがでしたか?

いま「独立したい」と考えている人に向けて、自分の経験を元にお伝えしました。

この記事を読んだ後に独立を決意した人の人生が少しでも良い物になることを願っています。

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